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現在、私の知る限りではキャメロンハイランドを舞台にした小説は3冊出ている。(日本国内)

熱い絹
マレー鉄道の謎
綺羅の柩

キャメロンハイランドを舞台にした小説

なぜキャメロンハイランドを舞台にした小説が多いかというと、ジム・トンプソン失踪事件があった場所だから。

ジェームズ・ハリソン・ウィルソン・トンプソン
(James Harrison Wilson Thompson, 1906年3月21日 - 1967年?)
タイのシルクを世界に広めたことで知られるアメリカ人実業家。
元軍人で、CIAの前身機関であるOSSに所属していた諜報員だった。
休暇中にキャメロンハイランド(マレーシア)で失踪してしまった。

3作品中2作品は、このジム・トンプソンの失踪事件を元にしている。
1番有名なのは、1985年に刊行された松本清張の「熱い絹」だろう。
残る2作品は、ほぼ同時期(2002年)に発表されたている。

以下は、3作品の読書感想文だ。
現地の雰囲気が伝わって来る様な作品が好きなので、そういった点を基準にしている。

私のおすすめ順は、
熱い絹>マレー鉄道の謎>綺羅の柩

熱い絹(松本清張)の感想


熱い絹 松本清張(初版発行: 1988年)

マレーシアの高原カメロン・ハイランドの密林に消えた大富豪。
その謎を日本・マレーシアの両警察が追ううちに次々と起こる連続殺人。
緊張をはらみつつ、事件は意外な結末へと一気に向かう。
1967年に起きたタイ・シルク王「失踪」事件を背景に、雄大な構想でまとめあげられた本格長編推理完結。

熱い絹は、上下巻合わせて結構なページ数だが、スラスラと読めた。
最後のオチに不満がある人も多いみたいだけど、私としてはかなり楽しめた。

この小説の中に出てくるシルク王=ジェームズ・ウイルバーが、ジム・トンプソンをモデルにした人物だ。
キャメロンハイランドでの失踪事件に加えて、軽井沢で姉が殺された事件を絡めている。
実際のジム・トンプソンのお姉さんも、ジムトンプソン失踪事件の5ヶ月後にペンシルベニア州の自宅で他殺体で発見されていて、失踪事件と何らかの関係があるかもしれないと言われているが詳細は不明。
こういった伏線がちりばめられている点も、1番読み応えがあった。
しかし伏線は、回収されておらず...

日本から来た警部達が、キャメロンハイランドを巡っていく様子がとてもリアルに描かれている作品。
きっと松本清張は事前にキャメロンハイランドへ行ってみっちりと取材したんだろうな。

マレー鉄道の謎(有栖川有栖)の感想

マレー鉄道の謎 有栖川有栖(初版発行: 2002年5月8日)

旧友・大龍の招きでマレーの楽園、キャメロン・ハイランドを訪れた火村と有栖川。
二人を迎えたのは、舞い飛ぶ蝶ならぬ「殺人の連鎖」だった。
ドアや窓に内側から目張りをされた密室での犯行の嫌疑は大龍に。帰国までの数日で、火村は友人を救えるか。
第56回日本推理作家協会賞に輝く、国名シリーズ第6弾。

「臨床犯罪学者 火村英生の推理」というドラマにもなった人気シリーズ。
私はドラマを見ていたので、「マレー鉄道の謎」を読んでいると、どうしても斎藤工&窪田正孝が思い浮かんでしまった。
2人とも好きな俳優なんだけど、テレビのイメージが出て来ちゃうのはちょっと残念。

この本もスラスラと読みやすいし、キャメロンハイランドの雰囲気も良く伝わってくる。
しかし他の2冊とは違って、ジム・トンプソン失踪事件の話じゃないのが、ちょっと軽いかな?という印象。
犯人がちょっと単純すぎというか、最初から怪しい人がそのまま犯人っていうのが...う〜ん。
もういっそのこと、主人公たちの友人の大龍とかだったら、衝撃的だったと思うんだけどなあ。

面白いなと思ったのは、海外に出て来て調子に乗ってしまったバックパッカーの青年(津久井)かな。
旅をしているとたまに出会う「こういう子いるよなー」みたいな青年。
それ言ったら、津久井を小馬鹿にする会社員バックパッカー(池沢)も、一癖ある小説家のイギリス人(アラン)も、旅先で良く遭遇するタイプだ。
この本には、「旅をしてると必ず遭遇するタイプ」の人物の特徴をとても上手に描いてる。

綺羅の柩(篠田真由美)の感想

綺羅の柩 建築探偵桜井京介の事件薄 篠田 真由美(初版発行: 2002年8月5日)

1967年イースターの休日、マレーシア山中の保養地から消えたシルク王、ジェフリー・トーマス。
彼の行方は今なお杳として知れない。
それから三十余年後、軽井沢の別荘でひとりの老人が死んだ。
奇妙な偶然と縁に導かれて南の国へと旅立った京介、蒼、深春の三人がついに見いだしたトーマス失踪の真相とは…

この小説でのジム・トンプソンは、シルク王=ジェフリー・トーマス。
建築探偵桜井京介の事件薄というシリーズ物みたいなんだけど、私はこの作品を読むのが初めてだった。

決してつまらないわけではないんだけど、読みにくかった。
オチ的には、さすが小説!という感じで面白いんだけど、物語の前半はなかなかキャメロンハイランドへ行ってくれないのと、余計な飾り文章が多いのとで、何度も挫折しそうになってしまった。
余計な文章がなければ、半分のページ数くらいでいける気もする。

Amazonレビューでも、苦手な人がけっこういるみたいで、ちょっとBLぽい?っていう感じだから、好き嫌いが別れるのかな。
私はBLが嫌なわけではなく(むしろ好き)...ライトノベルっぽい文章と言うのかな?それが、ちょっと読みにくかった。
これは好みの問題だと思う。
あとは、キャメロンハイランドの描写は割とされてたと思うんだけど、あまり現地の雰囲気が伝わって来なかった。

私が読みにくいと感じた原因のひとつに、登場人物たちの名前がある。
読みにくい名前が多いので、何度も最初の人物紹介のページに戻ってしまった。(あって良かった人物紹介)

弓狩惣一郎
遊馬朱鷺
栗原深春
輪王寺綾乃
刀根尚都
野尻環
神代宗

おこだわりのある素敵なお名前ばかりなんだけど...私アホなんで毎回フリガナ付けてくれないと読めないっす。
下手すると男なのか女なのかも分からなくなってしまうレベル。

それぞれのキャラクターがアニメみたいな感じで、現実離れしすぎているのも馴染めなかった。
例えば、遊馬朱鷺は西村京太郎シリーズに出てくる、今どき「そうですわ」みたいな言葉使いの女よりも不自然で違和感を感じてしまった。

酷評になってしまったが、読む価値はあると思う。
全体的な話の流れは面白い。

特にミツさんとトーマスの話は好きだなあ。
惣一郎の嫌われ者な感じも面白かった。
たまに詰まってしまう部分があるけど、そこさえ耐えれば面白く読める作品だ。